切ない

忘れ去りたい人が夢の中に出てきた。 夢の中の私は、その人が、私の入院している病室の隣の病室に入院したとわかってそわそわと落ち着かなくなっていた。 隣の病室の前を何度も行ったり来たり行ったり来たりしてしまっていた。 3人部屋の一番左のベッドにいるみたいだった。 病室のドアが開いていた時に、ちらっとだけのぞいた。 あの頃の髪型でサングラスをかけていた。ちょうど病院食に文句を言っているところだった。 「辛?っ」って まぎれもなくその人の声だった。なつかしい声だった。 私は、自分の存在を知られると、その人が不愉快な思いをするといけないと思い、気づかれないように細心の注意を払っていた。 もし私が隣の病室にいると知ったら、きっと、病院を変える、って言い出すに違いない。などと思っていた。そんなふうに思う自分がちょっと悲しかった。 気づかれないように細心の注意を払いながら、それでも私は何度も何度も その人の病室の前を行ったり来たりしてしまっていたのである。 それにしてもその人はいったい何の病気で入院していたのだろう? そして私も。 わからずじまいで目が覚めた。